夢に苦しめ続けられた青年が、悪夢の根源を絶つべく、少年時代に住んでいた団地に期間限定で再度入居する。そこにいたのは、住んでいた部屋に縛られ続ける霊と、青年を殺そうとする小柄なピエロだった。
俺のかつて生まれ育った団地だけど、そんな懐かしい雰囲気なんて浸れない。
二十棟もあった集合住宅で、当時はとても活気があった。今ではまさしく廃墟の塊と言っていい。なぜここに、またいるのか。
俺は少年時代、ずっと悪夢に悩まされていた。血が滲んだ包帯を全身に巻いた人のような何かが、十年近くも夢に現れていた。どんな状況下だろうが、不意に現れては必ず俺に襲い掛かっていた。しかもすぐには俺を仕留めにかからない。必ず全身を俺に見せてから、じわじわと迫ってくる。当時臆病だった俺はこれにかなり泣かされていた。幸いだったのは、やはり夢にしか出てこなかった事だろうか。
そんな夢は団地から引っ越してから急に見なくなり、次第にそんな事は忘れていった。
しかし、二十歳を過ぎてから少しながら、確実にまた現れ始めた。以前程、ヤツに対して怖いとは思っていなかったが、同時に悪意を感じ始めていた。何故なのか知りたくなってきた。
こうして団地を管理していた住宅公社に無理を言い、昔住んでいた部屋に再度、期間限定で入居した。団地を出てから夢を見なくなったから、ここに何かあるのかも知れない。
だがそんな知りたかった事が、あんな大事になるとは思っても見なかった。
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