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旧鼠の星new

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作者 来星馬玲
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チャプター 1 遭遇

文字数:7730    |    更新日時: 04/09/2022

した相貌が微かに歪められた。身に着けたゴーグルによって保護された瞳の

、容赦なく破壊的な紫外線を浴びせていた。ユスチィスの獣毛

者たちのもたらした痕跡を嫌っているかのようであった。そのせいで、この地を闊歩する多

り、声を上げた。風に妨害されても耳に届いてくる、高い声

進むことは肝要であった。もしはぐれるようなことがあれば、まだ

てくるのを待った。ユスチィスは重い足取りでト

ンガ-ソンはユスチィスの横顔の獣毛に張り付い

の掌を開いて見せた。そこには何かの構造

そこで拾ったんだ。おそら

は、分厚いゴーグルの中

るんじゃあ、ぼくたちだけでそれ

い。が、諦めるに

スはそんなトンガーソンに憧れていたものであるが、今のユスチィスには

われていたが、それを嫌というほど思い知らされて

った瓢箪と乾燥させた平たいパンを取り出した。パンを手で千切り、

もう片方をユスチィスに手渡す。一言だけ、「

を潤した。それからまだ水が三分の一ほど

れたかな。じゃあ

ンガーソンが歩き出す。ユスチィス

がっていた。ユスチィスはげんなりしたが、トンガーソンは迷うことな

ける日差しが強くなってきた気がする。ユスチィスは

は相変わらず苛烈であったが、一

。ユスチィスはようやく休憩かと、一

ですか、トン

けながら何かを探し始めた。しびれを切らしたユスチィスが再度トンガーソンに声をかけよう

た。あ

露わになった黒色の金属

述の中でしか語られず実在するかどうかも怪し

りも、自分自身に言い聞かせているという様子であ

ソンに弟子入りした頃は、未知の領域と呼べる過去の遺物を探求する心に胸を

うという生業は、かつてのユスチィスの夢見ていたものとは程遠く、何時し

鼠を救うものがあると聞かされており、ユ

姿を幾度も見てきたユスチィスであったが、その時の成果

の者たちの遺した残骸ばかり。あら

た文明も現代において意味を成すことはない――それが、トン

れを見ろ。ここに

る、砂上で露わになっている壁面に目を向けた。トンガーソンの教えを受けてい

く異なるが。風化していて所々のは判別もできないが……

ている内容を丹念に読み解こうと試みていたが、やがて、小さく息を

しい。ユスチィス

…は

した硬いものが足の裏に当たる。熱を帯

じゃないぞ。重要なメッセージが隠さ

、砂に埋もれている遺物の壁面をかきだした。鋭い爪

を探索し始めた。トンガーソンはユスチィスに対して、「何

運ばれてきた砂によって、悠久の時を隠され続けてきた

……これから発掘隊を組織して本格

から地上を旅して遺跡を巡ってきた実績があり、同好の士と呼べる仲間たちがいた。それが

るのが旧鼠という種族である。部族の垣根を越えて手を結ぶト

来を憂いている者たちが、近年になってトンガーソンたちを支持しているという背景も

ーソンに伝えた。トンガーソンはそれらを分厚い樹皮

いことはわか

チィスの言葉には、幾分

が、先人が一体何のために、それら

ていた、崩れた金属板の

文章にしたものらしい。ご丁寧に横には絵まで書かれ

足歩行で、前足を器用に動かし、道具も使っていたらしい。それらの

つまり、自分らの文明の実態を我々に伝えること

る――それにどれほどの意味があるのだろう

は遺跡の調査に没頭した。ユス

陽は徐々に遠ざかり、日

ーソンさ

ンに向かって、とうとう痺れを切

把握できたし、手土産もこれだけある。連

中というのは、先史文明の探究を生業としている者に助力している資産家たちのことであ

ーソンが帰り支度を始めたの

な、じゃ、

トンガーソンの言葉に、ユ

時間直射日光を浴びていては、丈夫な旧鼠であろうと、眼球を傷つけること

ってきた。真っ先にこれに気づいたトン

、彼に声をかけようとしたところで、全身を足

震…

言葉を聞いたトンガーソ

違う。こ

れた。彼の相貌には、動揺と憤り

い、伏

況を呑み込めていないユスチィスの胸の辺

皮膚に覆われた左の掌が当てられる。ユスチィスは己の

ているように促した。ユスチィスはこれに従い、瓦礫の散乱

っきりと聴こえる騒音が断続的に響いた。ここに

蛇…

脳裏には、鎧のような硬い甲殻に覆われた、蠢く節足の連

出した。トンガーソンもまた、恐慌状態に陥りかけたが、よ

練のトンガーソンの差は顕著なものとなる。この時になってユ

。真下の地面の中を、長く

優れており、聴覚もまた例外ではない。それに、僅かな物の振動や熱でさえ

た。しかし、下手に逃げようとしたところで、圧倒的な速

僅かな希望にすがるしかない――二人の旧鼠は、

が、やがて、ゆっくりと互いの顔を見合わせる。両者は、落ち

のでしょうか

ぶった。トンガーソンは

そうら

ったが、幾分の希望的観測をふ

の空気にさらされていた。無情な太陽

いる荷物をかき集め、リュ

のかもしれないな。せっかく発見した遺

クを背負う。このような危険が伴っているのでは、

ていないユスチィス

方が良さそうだ。帰

ソンがそう

し上げるような衝撃

ち上げられ、中空に放り出された瓦礫が

瞳ににらまれ、ユスチィスは全身が毒で麻

せる。家族の死、仲間の死、自分の死。対峙してしまえ

、それ一本で旧鼠の胴を引き裂けるほどの

、彼を叱咤した。我に返ったユスチィス

獲物に向かって長い胴体を突き出し、

旧鼠が大蛇に勝っていることと言えば、体の小ささ故の小回りのききやすさ程度であ

れる、大蛇の胴体。砕けた瓦礫が逃

ィスの手がするりと抜けてしまった。勢い余ったユスチィスがその場に転倒する。起き上がったユス

みをこらえながら、

ろ、ユ

、迫る大蛇に向かって

ソンさん。

浴びせるユスチィス。その声

冷静な判断を下せずにいる者を交互に見やった。何事かを思案してい

ィスのいる地面がそそり立ち、

し、立ち上がろうとする。衝撃でひび割れたゴーグル越しに映る光景。そ

スは上体を起こそうと、地面から突き出して

迫った。口を開いた大蛇がユスチィスの頭

スチ

て砂の上を転げまわり、大蛇の咢をかわす。その

ィスの方に向き直り、頭部

あれでは追

しでも時間を稼ごうと、ユスチィ

を叫ぶユ

が砂を踏み抜き、ずぶずぶと全

ガーソンもまた、眼前の

ていた。ユスチィスがもがくほどにその速度は早まり、既に埋まっ

彼の左腕を両手で掴もうとした。先ほど抉られた右手

なったトンガーソンは寸でのところでかわしたが、横に払われた頭部によっ

だけの邪魔者でしかなくなっていた、ひびだらけのゴーグルを投げ捨てた。見る

トンガーソンは、すぐ傍に大蛇がいることも忘れて、立ち尽

ガーソンの嗚咽

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