願いを何でも一つ叶えることができる妖精(エテレイン)。 主人公のソフォは、兄クレスがある事件で◯された。大切な人、幸せを奪われた彼は絶望のどん底へ落とされる。すると、見知らぬ男性と出会いをきっかけに……。 これからのソフォの運命どうなっていくのか!? 天才少年がさらに強さを求めて成長する冒険ファンタジー!
『四つの鍵を集めし者は我がもとへ訪れよ』
これは誰もが知っている有名な言葉だ。
この世界は、四つの国に分けられており、それぞれの国に一つずつダンジョンが存在している。東にある国アナトリー、西にある国ディーシ、南にある国ノートス、北にある国 ヴォラースの四つだ。
それぞれのダンジョンには、最深部に神級の魔物が存在し、たどり着くことができた者でその魔物に認められると鍵を受け取ることができる。それらを全て集めた者は存在の確認されていない五つ目のダンジョンに行けるのだ。
それを求めて誰もが鍵を手に入れようとする。
ただ、それは五つ目に行きたいという目的で鍵を探すのではない。五つ目のダンジョンの最深部には、願いを何でも一つ叶えることのできる精霊(エテレイン)が存在すると言われている。
しかし、誰もが成功したことのないその未知な情報と確信のない話には、信じない者が大半を占めていた。だが、話を信じる者も必ずやいなかったわけではない。その少数派の中には真剣に鍵を探す少年までも現れた。
その少年はのちに周りの誤解とその才能に悪意を込めて『笑顔のサイコ冒険者』と呼ばれるようになる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「なあなあ!クレスは信じるか?この本の話」
ソフォはそう言ってクレスに『エテレイン』と書かれた題名の本を見せた。
「んー、微妙ー。だって、誰も最深部にすら行けてないもん。その情報があることすらおかしくない?」
「えー、面白くなーい。でも、もし本当だったらクレスは何をお願いしたい?」
ソフォがクレスに質問すると、クレスは顎に手を当てて少し考えてから口を開いた。
「そうだなぁ。僕はこの幸せがずっと続いて欲しい……かな?」
クレスはそう言うとソフォに優しく笑った。「幸せって?」 とソフォがあまりピンとこない顔でまた問う。
「ソフォと笑って話して一緒にいるこのいつもの生活が続いて欲しいってこと。ソフォといると幸せだから」
すると、その言葉にソフォは急に胸が熱くなり照れ臭い態度をとった。その様子を見て、クレスは笑いそうになり必死に我慢すると腹筋がひくつく。
そして、少し落ち着くとクレスは質問を問い返した。
「ソフォは信じる?何をお願いしてみたい?」
ソフォは「うーん」と太い息をすると、眉間に薄いしわを刻んで腕を組み考え込む。何度か唸りながらもその体勢を十分も続け、とても考えを悩ませている面持ちだ。
すると、「おーい」とクレスが待ちくたびれたような表情でソフォに手を振った。
「真剣に考え込みすぎだよ」
とクレスが言うと、ソフォは「すまんすまん」と苦笑いしながら謝った。
「いやー、だってさ、信じてるけど、本当かわからないし。本当かもしれないけど、見たことないしで迷っちゃってさ」
と困ったように頭をかいてソフォは言う。
「じゃあ、叶うなら何を願う?」
「特に願いとかは無いんだよなぁ。うーん……俺もクレスと同じで今が続いて欲しいと思う」
ソフォにとっては金より身分より力よりクレスの方が好きで何よりもかけがえのない大切な存在なのだ。
そう言いながらもソフォには、今が続かないと言うことは想像できなかった。この楽しい時間が幸せな時間が無くなることはないと思っている。
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