東條春輝は私立高校に通う2年生だった。 学校では、書道部の部長を務め、書の世界でも、少しずつ認められてきていた。 プロのカメラマンを父に持ち、1人で生活することの多かった春輝。 そんな時、父の再婚が決まった。 春輝は特に反対せず、父の再婚を受け入れた。 新しい母は警察官僚で家にほとんど帰らないが、母の連子である新しい妹は人見知りな所があるが、超絶美少女だった。 ほとんど家に帰らない両親なので春輝は新しい妹、紗良とのほぼ2人暮らしが幕を開ける。 これは、兄妹の甘々な日常を描いたラブコメディ。
薄暗いリビングで特に何の会話も無く、カップ麺をすする。
今日は珍しく親父も家に帰ってきていた。
「なぁ、俺、再婚しようと思っているんだけど、どう思う?」
父が唐突に口にした。
「俺ももう子供じゃないんだから親父の好きにすればいいだろ。ってか、そんな忙しくて結婚とか大丈夫なのか?」
父はプロのカメラマンで、世界を飛び回る世界をしている。
家にも滅多に帰って来ない。
「お前を1人で寂しい思いをさせて来たからな。家族ができるのはいいかと思ってな。向こうにも娘さんが居てな。お前の妹になるが、それでも構わないか?」
「そんなん、気にすんなよ。俺は大丈夫だよ」 「そうか、ありがとう」
男の親子の会話なんてだいたいこんなもんじゃないだろうか。
俺の母は俺が産まれてからすぐに息を引き取ったという。
それから父は男手一つで俺を育ててくれた。 だから、多少忙しくても家に帰って来なくても文句は言わなかった。
「来週の土曜って空いてるか?」
「バイトも入れてないし、空いているよ」
「なら、その日に顔合わせと行こう」
父の提案に俺は素直に従った。
「お前に小遣いあげてるし、別にバイトしなくてもいいんだぞ?」
毎月、父親からは十分すぎるほどのお小遣いを貰っていた。
「自分で稼いでみたいお年頃なんだよ」
「なんだそりゃ」
会話を終えると、また無言で残りのカップ麺をすすった。
***
なんだかんだで一週間が経過しようとしていた。
今日は親父の再婚相手との顔合わせの日である。
「これでいいのか?」
「いいんじゃないか」
俺は珍しくスーツに袖を通した。
親父もダブルのスーツを着ていた。
「着いたぞ」
「おう」
親父の運転する車で隣町の駅近くにある喫茶店に到着した。
「なんか緊張するな」
「なんで親父が緊張してんだよ」
「分からん」
先に着いた俺たちは、店内で待っていた。
俺と親父が喫茶店に入った数分後、親子と思われる2人の女性が入ってきた。
女性と言っても1人は高校生くらいの女の子と言った方がいいだろうか。
「あ、どうも」
親父が立ち上がり、右手を少し上げた。
それに答えるように女性も会釈をした。
彼女が親父の再婚相手なのだろう。
「こんにちは」
「ああ、わざわざありがとうな」
彼女たちも俺と親父の対面の席へと腰を下ろした。
「紹介するよ。こちら、俺の再婚相手の美咲さんとその娘さんの紗良さんだ。こいつは俺の息子の春輝だ」
親父は一通り紹介してくれた。
「初めまして、お父さんと再婚させてもらう美咲です」
そう言うと彼女は微笑みを浮かべた。
なんて美人な人なのだろうかと思う。
「初めまして。春輝です」
俺も挨拶を返した。
「ほ、ほら。貴女も挨拶しなさい。貴女のお兄さんになる人なのよ」
「う、うん。は、初めまして紗良です……その、よろしくお願いします」
そう言って紗良は頭を下げた。
めちゃくちゃ美少女が少し恥ずかしいそうにしている。
その姿に俺は少し、いや、かなり見入ってしまった。
「こ、こちらこそよろしくね」
これが東條春輝と妹になる、東條紗良の出会いであった。
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