異世界から島ごと移動してきたシェオタル王国は十数年前の戦争で滅びた。極東国の占領を受けた王国は瀬小樽県として編入され、極東の資本によって急速な開発が進んでいた。そして、極東語の侵食のために、彼らの言語は失われようとしていた。姉との約束で言葉を守り続ける少年ヴェルガナフ・クランはそんな中、極東本土からの転入生の少女と出会う。 Illustration by KPHT=YY (@yuugokku_2)
「ほらそろそろボクは出掛けちゃうぞ、ヴェル君。」
「Mили, вай……со эс кхмарласэ……(待ってよ、姉ちゃん……焦り過ぎだってば……)」
玄関に立つ姉の影が見えた。彼女は待ちくたびれたかのように手を組んで、背を伸ばしていた。
言葉が違うものでも通じあえるのは、姉がこの言葉――シェオタル語の研究者だからであった。俺もシェオタル語を知っている。だから、俺と姉は二人の間だけで秘密の会話が出来る。ヴェルという自分のニックネームも彼女が自分に付けてくれたものだった。
「Йол ми тюдест йа!(もう行っちゃうよ!)」
早く来るよう催促する姉は玄関で腕を組んで不満げにしている。俺はその声を聞いて焦った。自分の持ち物を確認すると姉のもとに走る。小学三年生となった今年の誕生日に買ってもらったお気に入りのバッグに帽子、忘れ物はない。
街は賑やかだった。
年末祭の屋台が残る今は一月、雪で真っ白に覆われた瀬小樽(せおたる)の街はどこを歩いてもしゃくしゃくと雪を踏み潰す音が聞こえた。それが楽しくて何ら欲しいものもないのに姉の買い物について行くことにした。
「Зэлэнэ хармиэ со зэност фаллэр каштлурк?(今日は何の昔話が聞きたいかな)」
「うーん……」
姉は俺の方を見てにこにこしている。シェオタル人特有の銀色の髪が陽光を受けて独特の光沢を放っていた。ポニーテールと一本飛び出たまとまった髪の毛が可愛らしかった。いつ見ても研究者というステロタイプに似合わず綺麗な姉だと思う。
この瀬小樽には二人以外にシェオタル語を知っている者は居ないと言っても良い。姉は昔はもっと多くの瀬小樽の人が知っていたというが、俺は話せる人間には会ったことがない。だからこそ、安心して二人だけの秘密の話が出来る。そうやって姉からは面白いシェオタル語の昔話を幾つも聞いていた。姉とシェオタル語を話せる時が自分にとって一番楽しい時だ。
「そうだ、ブラーイェの話をしてよ」
「ふふっ、これで何回目?」
姉はしょうがないとばかりに微笑んだ。だが、全く嫌な素振りは見せなかった。彼女自身も|守護者《ブラーイェ》の話は好きなのだろう。
ブラーイェ、瀬小樽を守る魔導守護者の話である。シェオタル人が滅びようという時、悠久の時を越えて復活し敵を滅ぼす。そういう感じの昔話だった。シェオタル人を滅ぼそうとする憎悪と悪意しかない人々が、守護者たちによって薙ぎ倒されていく話のオチは何度聞いても心が熱くなった。
そんなこんなで歩いているといきなり姉が俺の髪を触ってきた。
「というか、その長い髪切りなよ?後ろ髪なら良いけど、前髪が目に掛かるのは――」
そこまで言って姉は背後を仰ぎ見た。何のきっかけもなく、何かに気づいたかのようだった。
大きく軋む音が聞こえる。俺は振り返る暇もなく姉に突き飛ばされた。歩道に投げ出されて転げ回る。視界に移るものが目まぐるしく変わっていったと同時に破壊音が聞こえた。
俺には何が起こったのか全く理解出来なかった。打った頭が脈動と共に痛んだ。やっとのこと立ち上がって前を見る。そこには姉が歩道に横たわっていた。奥の方を見るときれいに並んでいた年末祭の屋台が薙ぎ倒されていた。その先に塀にぶつかった車体が見えた。
「姉ちゃん!!」
何も考えられず、姉に走り寄った。体の節々が痛むが構ってられない。姉のもとに近づいて顔を確認する。彼女の額からは血が流れていた。彼女は何か達観したかのような表情になっていた。呻きながら塀にぶつかった車を確認して、深く息を吐いた。
「Йа, шэотал йуи эс шалэ ла лэш. йуи в'афла мал йуи афла фьасфа фуа нейодо.(ああ、シェオタルはいつもそうだった。いつも誰かに虐げられて、いつも誰かを虐げていた。生きるために)」
「喋らないで!今すぐ誰か呼んでくるから」
姉は俺の手を掴んで首を振った。弱って震える手で俺を抱き寄せて、頬を擦り寄せる。苦しそうな息遣いが聞こえる。名残惜しそうに寂しい表情をしていた。いきなりの行動に固まったまま何も出来なかった。
「ヴェル君、一つお願いがあるんだ」
「姉ちゃん……?」
姉の青い瞳が真剣にこちらを見つめていた。答えようにも口がうまく動かなかった。混乱して、言葉が出てこなかった。
「ボクが死んでも、シェオタル語を忘れないで守ってほしい。ボクのためにも、シェオタル人のためにも……必要なんだ」
「忘れないし、姉ちゃんは死なない!待ってて、絶対に戻って――」
腕を強く掴まれる。姉の表情はとても真剣だった。見ていられない気持ちになって辺りを見渡す。こんな事故が起こったのに、人一人誰も来ないのが不思議でならなかった。
「約束して、ヴェル」
姉は自分の髪からヘアピンを取って、俺の髪に付けた。目に掛かる右髪を留めて、頬を撫でる。すると彼女は眠るように静かに目を瞑った。体から力が抜ける。俺の腕を掴んでいた手は力無く地面に打ち付けられた。
「えっ、姉……ちゃん?お姉……ちゃん……なん……で……」
涙が溢れてきた。何も聞こえなかった。何も感じることも出来なかった。その時はただ、その場で泣きつくすしか無かった。
ある夜、彼女は元彼にが麻酔をかけられ、ある謎の男に利用された。二人は淫乱で恍惚の一夜を過ごした。 復讐をするため、彼女はその男と結婚し、彼を利用した。 「私が生きている限り、彼の妻はこの私だ。あんたらは泥棒猫にすぎないわ」 彼が他の女性とのスキャンダルに巻き込まれたときでさえ、彼女の決心は揺らなかった。 結局、また彼に裏切られたと知ったとき、彼女は怒って立ち去った。ところが数年後、彼女がまた彼のもとに戻った。彼は驚いた。彼女から欲しいものを全て手に入れた彼が、何故まだ彼女を苦しめようとしているのか、彼女には理解できなかった。
主人公の松本梓〈高校1年〉は出来たばかりの演劇部に所属しており主役をこなしていたため常に生徒からの憧れ的な存在だった。 そんなさいたま学院で毎月自主公演を行うたびにファンクラブができるほどのスター的な存在だ。 だがそんな彼女にも大きな悩みがあった。それは過去に壮絶ないじめを受けて男性に触ることもできない恐怖症と同性愛だ。過去のトラウマから誰にも相談できずに一人で悩み苦しんでいた そんな梓の事を独占しようとするさいたま学院の生徒会長、城ケ崎茜〈高校2年〉に目を付けられ、禁断の関係を求められる。 しかし茜の父親は大手銀行の社長で学院に多額の融資をしており、更に梓の父親は銀行の営業部長でもある。弱みを握られている梓は茜には逆らえず、演劇部の活動の為にいつも気持ちを殺して〈偽りの愛〉を受け入れていた。 そんな中、10月に行われる全国高等学校演劇大会の地区予選の案内が発表された。 かつて梓が小学4年の時にいじめ問題を解決するために奮闘した、小学校時代の恩師でもあり、恋心を抱いていた青井春香先生はさいたま学院演劇部のエースで全国制覇を有望視されていたほどだった。 梓が所属するさいたま学院演劇部は1年前に設立された部だが、かつて全国大会に出場するほどの強豪校だった。だがある一人の部員が起こしてしまった傷害事件のせいで全国大会辞退を迫られた過去がある。 更によき理解者の春香先生は梓をイジメていた生徒へ手をあげてしまったせいでPTAや学校から精神的に追い込まれて自殺をしてしまった。 遂に地区大会へ始動しようと動き出す弱小演劇部だったが肝心の脚本を書く人材がいなかった。 そんなある日、同じクラスに春香先生に似ている女子生徒でラノベコンテストの新人賞を受賞した妹の〈青井美咲〉が転校をしてきたため運命的な出会いを果たす事が出来、皆が全国大会出場を目標に動き出そうとした時に茜率いる生徒会による陰謀が動き出したのだった。
母親のいない環境で育ったジェイン。 父のヘンリーが愛人を家に連れて帰ったとき、彼女の人生は絶望の淵に落ちてしまった。 兄弟の意地悪で、父が遠ざかっていった。父に愛されたい一心で、家族のためなら自分が犠牲になっても構わないと思った彼女は、父が欲しがっていた土地のために金持ちのCEOと結婚した。でも、彼女の失敗と家庭の複雑性で皆に見捨てられたことがわかった。母親の死の真相を明らかにするために、ジェインは命をかけた。あれは事故なのか?それとも殺人?継母が父を裏切ったとき、彼女は父の会社を破産から救うと決めた。 この世界でひとりぼっちになったとき, ジェインは元彼と出会った。彼の優しさは、彼への愛情を再燃させるだろうか?彼女は結婚生活を続けられるのだろうか?