img THE EARTH―灰が降り積もる世界で少女と旅をする―  /  チャプター 3 裸の少女は汚れた英雄を鼻で笑うだろう | 20.00%
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チャプター 3 裸の少女は汚れた英雄を鼻で笑うだろう

文字数:7458    |    更新日時: 01/07/2021

動くようにザラッという音。ちょうどそこはカラスが歩いた道

鰭側についている鰓から砂を排出する。それを推進力としたうえで、地中を移動する陸鮫の鼻先には発達した

闘が想定される中、無駄な弾丸を使うわけにはいかなかった。

くなると同時にもう一度全力で走り始める。息を切らし始めたカラスを嘲笑うか

漠とは違い、猛烈に照り付ける太陽が無いものの、灰として降り積もった花粉は確かに人々の肺を

背負っていた疑似駆動銃を手にしようとした

ていく。ただ地面が割れるだけでなく、陥没し、隆起し、カラスの周囲の砂漠は凄まじい勢いで

壁面は明らかな金属の壁で補強されて

だ……

あの村の村長が指定していた座標であり、連続の偶然に

この横穴とは言い得ぬ何かは洞窟とは言えない。というのも壁面が明らかな金属の壁で覆われてい

が不安になってきたところで、ぼうと弱弱

ように、その口を開いた横穴は確か

った様な、それこそこの横穴が無限に続いているのではないかという錯覚にカラスは襲われていた。自分が

れによって、その道の脇に腰を下ろし、

の何かがあるかもしれないから。[青い鳥]が生きることのできる環境を発見できるかもしれないから。そんなこと

辿り着いた。この時代において空間と呼ばれる概念はいささか取り扱いにくいもので

っており、天井は遥か高くまでに伸び、空洞

た瞬間目の前に巨大な

…!

層ビル群が立ち並んでいるような大都会が広がっていた。何が起きた

見ている

うことを行う者なんてそうそういないであろう。しかし今のカラスは

は夢ではなく、目の前にある大都市は自分の瞬きの後に突然出現した。わかっている

しれないからではない。これが掃除屋の本拠地かもしれないからではない。微

それどころか料理でしか嗅ぐことの

スは疑似駆動銃を構え、それを狙った。まん丸の身体は絶えず回転し続け、それ

型であった。しかしその掃除屋はゆっくりとその街

してこ

砦の村の長に話した地震動を引き起こす巨人型の掃除屋など世界中

付けられた液晶、二輪車型であればヘッドライトといっ

接続されている掃除屋たちは、本来意思を持たないただの世界システムの手足に過ぎないのだが、人間を見て襲ってこないことや、掃

の前にいる掃除屋は自らの意思でカラスを攻撃しないと判断し

が出来るわけではないのだが、少なくとも恐らく世界で初めて人

する掃除屋にこの街を案内させるわけにもいかず、

のではないだろうかと、想像できるくらいには近未来という言葉が似合う街並みであったが、近い

間が想像したとは思えないスタイリッシュな形状の建築物たちなど。その既視感の

を書籍化したことのあったカラスは久々にモノを書く意欲が湧くが

が立ち並んでおり、それが特にカラスの興味を惹きたてた。カラスは

光景は白い壁に、薄い暖色のソファ、人に近い

患者のような恰好をした掃除屋が座っており、カウンターには看護師のような恰好をした掃除屋が立っている。診察室と

を行っていた掃除屋も、恐らく銀行や商店らしき施設

。何の

わからない話であり、恐らくここの掃除屋もカラ

界の終末と共に突然現れた掃除屋と呼ばれ

こと。それも人間の形をしていない機械に人間を演じさせ、

られたような感覚に襲われた後、この都市を作り上

の掃除屋を乗せ、二輪車型の掃除屋がそれを押す。道路を四輪車型掃除屋が走り、鳥型掃除屋が空を舞い、喫茶店のシートに円柱型の

はありえない。機械によって作られた機

めるために作りあげた偽物。それ

悪い。気

は、機械でありながらこれほどまでに劇的で鮮やかで美しい進化を遂げるものなのかと。しかし真実

建造物。近未来的な建造物とは打って変わって、過去を感じさせる石材で作られたそれは豪華絢爛で、刺々し

を見て、通り過ぎた後も掃除屋たちはその背中を見つめ続ける。本来であればカラスは彼らの敵であり、

を見守る母親のように。カラスがこ

ちはその城までの道を両側に並び、道を

飾からは考えられない殺風景さに驚

尚、その好奇心が薄まることはなく、城の内部に多少の期待を抱いていたのも確かだった

への階段を見ることが出来た。薄暗い建物の中にあるそれは

りていく。彼の心には一片も恐怖と言う感情はなく、

院で見た硝子の扉とは違い、金属製のそれ

カラスはその部屋とは言い難い空間の光景を見て驚きを隠すことが出来な

せらぎを何年ぶりに聞いただろう。そして無数とも呼べる[青い鳥]た

……? そうか地下だから灰の

しようとするが、そんな簡単に理解でき

、突然変異を余儀なくされたものの、環境に適

の青臭さは鼻腔を鋭く抜け、そこらに転がる動物の糞は鼻をついた。だ

も、自然を心から慕っていた。その人間が、自然を失った世界で

前に、身体は弾かれるように動き、その

分知っていたのだが、長年一日に数杯、それも濁った水しか飲むことが許

タンクであれば、コップ二杯も飲んでしまえば向こう数日は、水を口にすることはできないだろう

動物に狙いを定める。流線型の鮮やかな体躯を持ち

鹿

留めることは簡単であった。どさりと力なく倒れたその鹿に解体のため近寄ろう

……狼

スの方向をきつく睨んでいる。首元を鹿の血で染めつつ、喉を鳴らし、これは俺の獲物だ

の数秒で充分であった。久々に見る弱肉強食と言う自然の生態系は底知れぬカラス

優しいものかカラスは強く心に刻み込む。しかしそんな自然の中に一つだけ異

しい機器が立ち並んでいる。硝子容器の大きさは鹿や羊などの中型草食動物一匹人分

見てみると、その金属部分の

…。中に入ってい

瞬間、機械は駆動音を鳴らし始め、硝子容器の中を満

だろうと思っていた。そのためその液体が下降にするにつれ、人の頭

らしき凹凸は見られないが、男にあるべき

閉ざしたまま、首の裏に繋がれたプラグのみに体を支えられてい

床で打ち付ける。一回、手応えはない。二回、若干の

ら取り出した後、自らの上着をその少女の身体を覆うよ

が襲いに来るということもなかったために、カラスは

バランスを保っており、綺麗な顔立ちに見せていた。しかし瞼から伸びるまつ毛はピンと背を

し、首筋をそっと撫でると、既にそこにそれらしいも

いよく上体を起こし、目を覚ました。その突然の出来事に

は―

――誰

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