『助けたら、助けてもらえる世界』を夢見る少年、直弼レンジは、この世ならざるものを使役する方術、《響法》を生業としていたが、食い詰めて、協会を介さずに、某地方市在所の響法結社《吾妻桜花》から『闇営業』を受注した。 引き受けたのは、地上げ。散失して久しい某地所の霊的所有権の現所有者を調べ上げ、その権利を《吾妻桜花》に譲り渡すよう按配する。 相棒の響法師、秋月マイカと共に地所に赴いたが、調査を始めた早々、そこに建つ学校共々、その地所が何者かの手によって呪われていることが明らかになる。どうやら依頼主である吾妻桜花も無関係とは知れず、協会による保障のない身分での闇営業は、何ら企みに巻き込まれないとも限らなかった。 陰謀から逃れるために、依頼を切り上げることも出来たが、どうやら呪いの渦中には、そこで友達になった学生、《原田アオイ》もいるらしい。 『助ける決意をした少女』原田アオイを学生共々見捨てて、呪いから逃げるか、その企てに踏み入るか。 登場人物紹介 幼少のころから他の人間とは違うものが見えた《レオ》 そんなレオの不思議さに気づきながら、自分にはわかりっこないその不思議さを受け入れたい《アキ》 《原田アオイ》は堕胎したばかり。レオやアキと同じグループに属しているが、自分や周りの何かを変えなちゃいけないと屋上でたたずむ。 《リサ》は自分に意志も考える力もなく、ただ周りの空気に合わせるしか能のない自分を嫌っていた。 《サオリ》は本当は力が無いくせに権力志向で、リサを支配しながらグループでうまく立ち回ることと、たまに男の思い出で虚しくなるとき意外考える事がない。 そんな彼らの学校にやってきた二人 《秋月マイカ》 《直弼レンジ》 周囲の目も気にしないズレた彼らは、いつも我が道をゆく。 彼らには《レオ》と同じようにこの世ならざるもの、 《タマユラ》が見えていた。 《更新日:1日1話、正午までには》 《非独占的な掲載。別小説投稿サイトにおいても掲載》
レオが水面にうつぶして、そこに映る者たちと話している時、不意に覗《のぞ》き込んできた一人の人間。
「お姉さんも、みんなのことが見えるの?」
彼女のことを無視して、みんなと語らいを続けていたが、水面に映るそのお姉さんのむごいほど優しげな面差《おもざ》しに、つい話しかけたくなってしまった。
「うん、見える。ボクがどんな世界を見ているのか、私にも分かるよ。」
「はじめてだ。この子たちのことが見える人間を見たの。」
光の破片《はへん》、流浪《るろう》する泡、暗く濁《にご》る渦巻き。水面に映った森を漂《ただよ》う、この世ならざる者たち。
「ええ、見えるわ。この子たちは、タマユラと言うの。」
「名前がついてるんだ。初めて知った。幽霊だと思ってだけど、違うの?」
「幽霊も中にはいる。だけど彼らの由来は人間霊よりもっと古いの。彼らは私たち人間が生まれる遥《はる》か昔からこの地球に住んでいるの。」
ねえ、ボク。水面から顔をあげて、私のことを直接見てくれない?
やっぱりだ。君の目はとても澄んでいる。
君の眼球は宝石よりも価値がある。
いっそそこから抜き取ってしまって、ポケットに入れていつも持ち歩きたいぐらいだね。
「さあ、私についてきて。」
差し出された手のひらに引かれるがまま、森の奥へと踏み出した。
「君には、この世界の本当のことを教えてあげよう。」
ーーーーーそれから数年ーーーーー
ノンシュガーのビスケットを袋から取り出す。一枚一枚。二つに割っては皿に入れ、皿にいれ。最後の一枚が終わるまで。あとは注《そそ》がれる牛乳。浸《ひた》したビスケットを大振りのスプーンで掬《すく》って、丁寧に口に運び続ける。こぼすことがないように。付け合わせのポテトサラダを時折フォークで突っつきながら。最後のミニトマトを串刺しにして、奥歯で噛み潰す。皿を洗って片付けると、手についた水をシンクで払った。そしてふすまを開ける。隣部屋の暗がりへと。畳部屋。黒いカーテンを閉じ切って、ガムテープで目張《めば》までした。暗い。ホコリ臭い部屋に吊った電灯のひもの宙ぶらん。引っ張ると点灯する、蛍光灯の明かり。畳の上に置くには不自然すぎるドラム缶が真ん中に。そこには痩《や》せ干せた女性が縛《しば》りつけられている。口をガムテープで塞《ふさ》がれ、怯《おび》えたような、怒ったような顔でレオを見上げていた。見られた方はにっこりと微笑む。
「梅雨が明けた。しばらくはいい天気が続くみたいだね。今日も清々しい青空だよ。って、この部屋からじゃ見えなかったね、母さん。」
母さんと、うえから声をかけられた彼女、そこで特別目を見開いた。いつから食物を摂《と》ってないのだろうか?骨の形が分かるほど痩せ細った肉。そのうえを乾いた皮膚が這《は》って、生きた骸骨のよう。髪は長い。ボロボロになって、多くが頭から抜け落ちている。まだ水気のある血走った眼球、その痙攣《けいれん》した眼差し。息子は穏やかな微笑み。そこにしゃがみこんで、透明なチューブは枯れた鼻腔に差しっぱなし。取り出したのは注射器。それを使って、ゆっくりと生理食塩水を注入する。
「そんなに怒らないでよ、母さん。たかが命を失うだけじゃないか。もう母さんにも見え始めているはずだよ。この部屋にだって彼らは漂っている。《タマユラ》。彼らは死際の幻覚でもなければこの世ならざるものでもない。むしろこの世界に初めから存在していた。死ねば母さんも彼らと同じになる。死はあの世とこの世と分けるものではなく、むしろこの世とあの世を分け隔てなくするんだ。生きてる間に味わった幸福も不幸もどうでもいいことになって、全て《タマユラ》の群れに掻《か》き消える。それは人間が生きているよりも自然な、当たり前の姿だと思うだろ?さて、今日のご飯はこれでおしまい。じゃあ、学校に行ってくるよ。電気は消していくね。その体じゃ、あかりを見てるだけで疲れるだろうから。」
暖かな日差しに濡れたブロック塀|伝《づた》いの路。今日も空は青い。それはなんという奇跡か。空を見上げるたびにこみ上げる、この青さに震撼《しんかん》する気持ち。そんな忘れてはいけない気持ちを今日も思い出せている。それだけで今日がとても上手くいくような気がする。学校指定の手提げカバンを肩に掛けながら暖かい路をとぼとぼと。そんな後ろ姿を突《つつ》く、ちょっとだけ重い感覚。誰かが背中を押したのだ。
その日、『私』は学校指定の制服のまま、夜の街を彷徨っていた。 地方の名も無い田舎街。だから、ちゃんと気をつけていれば、 警察に余計なお節介をかけられる心配もなかったはず。 だが、暗い街路を歩く最中、結局かけられる、余計なお節介。 といっても相手は警察ではない。 「おお、池村じゃん。」 と、家出して二週間が経つ私に話しかけて来たのは、 同じ学校の制服を着た、クラスメイトの山本セイヤだった。
A区B区の次に新たに発展したC区の全面的技術提供案。スリー・C・バックアップには、裏の顔があった。 日本の将来は非人間的な政策が施されようとしていた。 その時。なんと、C区の陰謀に一人の男が立ち上がった。 ちょっぴりシリアスなガンアクション。たまに笑えるラブストーリー。 ご近所物語 ハイブラウシティの続編です。 前作のご近所物語 ハイブラウシティをお読みでなくともお楽しみ頂けるように書きましたが、前作をお読み頂いた方がよりお楽しみ頂けるようになっています。
遺伝子研究上に才能がある若いロッキー・バイは同業者の中でもトップだった。会場に向かうフライトで、彼は飛行機事故に遭遇した。 ローキーが生まれ変わった! 彼はドラゴンを救い神龍帝国で訓練した。驚いたことに、彼のドラゴンは病気を治し、人々を生き返らせることさえできた。 ドラゴンと共に、ロッキーは新しい人生を歩み始めた。この時代、彼はもはや何の役にも立たない人間ではなく、野心的な武術の達人とスピリットのマニピュレーターになった。 彼らと一緒に冒険しよう!
主人公の松本梓〈高校1年〉は出来たばかりの演劇部に所属しており主役をこなしていたため常に生徒からの憧れ的な存在だった。 そんなさいたま学院で毎月自主公演を行うたびにファンクラブができるほどのスター的な存在だ。 だがそんな彼女にも大きな悩みがあった。それは過去に壮絶ないじめを受けて男性に触ることもできない恐怖症と同性愛だ。過去のトラウマから誰にも相談できずに一人で悩み苦しんでいた そんな梓の事を独占しようとするさいたま学院の生徒会長、城ケ崎茜〈高校2年〉に目を付けられ、禁断の関係を求められる。 しかし茜の父親は大手銀行の社長で学院に多額の融資をしており、更に梓の父親は銀行の営業部長でもある。弱みを握られている梓は茜には逆らえず、演劇部の活動の為にいつも気持ちを殺して〈偽りの愛〉を受け入れていた。 そんな中、10月に行われる全国高等学校演劇大会の地区予選の案内が発表された。 かつて梓が小学4年の時にいじめ問題を解決するために奮闘した、小学校時代の恩師でもあり、恋心を抱いていた青井春香先生はさいたま学院演劇部のエースで全国制覇を有望視されていたほどだった。 梓が所属するさいたま学院演劇部は1年前に設立された部だが、かつて全国大会に出場するほどの強豪校だった。だがある一人の部員が起こしてしまった傷害事件のせいで全国大会辞退を迫られた過去がある。 更によき理解者の春香先生は梓をイジメていた生徒へ手をあげてしまったせいでPTAや学校から精神的に追い込まれて自殺をしてしまった。 遂に地区大会へ始動しようと動き出す弱小演劇部だったが肝心の脚本を書く人材がいなかった。 そんなある日、同じクラスに春香先生に似ている女子生徒でラノベコンテストの新人賞を受賞した妹の〈青井美咲〉が転校をしてきたため運命的な出会いを果たす事が出来、皆が全国大会出場を目標に動き出そうとした時に茜率いる生徒会による陰謀が動き出したのだった。